2016.10.14 FRIDAY

メディアの進化を体感し大きな刺激をもらえるイベント~Message 文化庁メディア芸術祭20周年記念企画展に寄せて~

毎年優れたアート、エンターテインメント、アニメ、マンガ作品を顕彰、一般向けに展示し、世に広めるイベント「文化庁メディア芸術祭」。

サブカルの「アカデミー賞」との呼び声高い同祭も、今年開催20周年を迎える。それを記念し、10月15日から秋葉原で「文化庁メディア芸術祭20周年企画展」が開催することが決まった。過去20年の秀作が一堂に介す注目イベントである。

過去メディア芸術祭の審査員も務めた、“パックマンの生みの親”ことゲームクリエイター・岩谷徹さんに、お話を伺った。

岩谷徹さん

岩谷徹 Toru Iwatani

東京工芸大学 教授

ゲームクリエイター

1977年にゲーム制作のナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)に入社。『パックマン』をはじめ、『リッジレーサー』、『タイムクライシス』など数々のヒット作に携わった。メディア芸術祭では過去3回審査員を務めている。

岩谷徹さん

(C)BNEI

──岩谷さんは、2011、2012、2013年度の「文化庁メディア芸術祭」(以下メディア芸術祭)エンターテインメント部門の審査員を務められました。作品を見ていて、どう感じられていましたか。

岩谷 色々な作品が見られて、審査の時はすごく楽しかったです。メディア芸術祭に選ばれる作品を一言でいうなら、今までにない物に対する「挑戦」の作品ばかり。私自身も刺激を受ける発想や企画だらけなのです。現在は大学でゲーム論や制作について教えていますが、日々ゲーム作りに没頭している学生と一緒に会場に行くと、彼らの視野も凄く広がっていくように見えますね。

──若きクリエイターにとってもプラスだと。

岩谷 年に1度の大教材イベントと私は感じています。「今までにない物を」と一生懸命考えて形にした作品は、若者から大人まで楽しめる。一方で、もっとこのイベントは若い人に知られて欲しいとも感じます。行ってみると「凄いな」って初めて気づくのです。マスコミ等ではなかなかとりあげられない海外の秀作も多いのです。今回の20周年企画展で、世界と日本の名作がどのように違うか、比べられるチャンスだとも思っています。

──20年を振り返ると、全く色あせない作品も多いですね。

岩谷 その時々の「時代」ですよね。その時代をスパン!と切ったものが見られるのが楽しいし新鮮です。特に海外作品を含めたグローバルな作品に触れると、「僕らは、こんなにはっちゃけたことできないな(笑)」とその発想に驚かされることもしばしばです。時代性と若い人と、新しいことをやろうというエネルギーと。それをグローバルに見られるというのが「メディア芸術祭」の大きな魅力だなぁとつくづく感じます。

──外国人観光客の来場も近年は増えています。

岩谷 海外の方々にとって日本のゲームやアニメは「ちょっとオタクっぽい」というイメージがあると思うのですが、会場に来ると初めて気づくと思うのです。ただの「オタク」というコンテンツではないことが。これまで抱いていたイメージや、貼られていたレッテルが剥がされて、自分の国に戻っていくような気がするのです。安倍晋三首相が登場したリオ五輪のフィナーレもそうでしたが、あれはオタク文化を超えたメディアアートだと感じたはずです。会場を見て抱いていた日本のイメージをここで洗い直してみる。そんな思いになれば嬉しいことですね。

──最後に今回の20周年企画展に対して、メッセージをお願いします。

岩谷 この20年間で色々なメディアや芸術が生まれてきましたが、メディア芸術祭も「新しいメディア」における芸術とは何か、というテーマが原点にあります。ゲームの世界も日々進化し続けています。昨年、私は「ゲーミング・スーツ」というものを発表しました。モニター、コントローラー、プレイヤーという3つの要素をウェアラブルにしたものです。そこでは『パックマン』もできるという(笑)。まだ開発途中ですが、多彩なアート的表現やリハビリテーションへの応用も可能にしたいと考えています。また「インナーゲーム」といいますか、ゲームを飲み込むイメージで身体の中で感じるといったものも将来出来るかもしれない。

岩谷徹さん

ゲームだけ見てもまだまだ可能性があるんです。メディア芸術祭では毎回大きな刺激をもらっていますので、今回の展示も楽しみにしています。

岩谷徹さん

現在東京工芸大学ゲーム学科で教鞭をとる岩谷さん。研究室には代表作『パックマン』に関するグッズが所狭しとならんでいる

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